ウニ ヒロユキ
  宇仁 宏幸
   所属   追手門学院大学  経済学部 経済学科
   追手門学院大学  大学院 経営・経済研究科
   職種   教授
言語種別 日本語
発行・発表の年月 2023/09/30
形態種別 紀要(First author)
標題 適正価値はいかにして創り出されるか-J. R. コモンズの適正価値論の現代的意味-
執筆形態 単著
掲載誌名 追手門経済論集
掲載区分国内
巻・号・頁 58(1),23-44頁
総ページ数 22
著者・共著者 宇仁宏幸
概要 J. R. コモンズの理論は、1930年ごろを境に大きく変化した。『制度経済学』の草稿(Commons 1927-29)の執筆段階では、コモンズは適正価格論を「適正さ(reasonableness)」の主要な内容とみなしていたが、1929~34年の間に、コモンズは、この書物の最も重要な主題である適正価値(reasonable value)という概念の意味を大きく拡張し、最終的には、適正価値論は、適正価格論と適正な政策形成プロセス論からなる二層構造のものになった。そして、コモンズは、最終的に適正さの「認識的アスペクト(epistemic aspect)」を重視するに至った。この点において、コモンズの適正価値論は現代の政治哲学における適正さ(reasonableness)に関する議論に接続させうると考えられる。本稿では、この接続の道筋のひとつを提示することによって、コモンズの適正価値論の現代的意味の解明を試みる。本稿のⅡ節では、適正価値論の二層構造の概要を説明する。その上で、Ⅲ節では、J. ロールズによるrationalとreasonableの違いの説明とJ. S. フィシュキンによる熟議の質についての5つの条件の説明を紹介し、コモンズの議論との関連性について考察する。そしてJ. S. フィシュキンによる熟議の質についての5つの条件の難易度は、適正価格の実現と適正な政策形成とでは、かなり異なることを示す。Ⅳ節では、コモンズがウィスコンシン州産業委員会について論じた1913年、1916年、1934年の文献を比較検討することによって、コモンズは適正さ(reasonableness)の中心的意味を、すべての事実の調査と正当なウェイトの付与という意味から、利害を異にする諸組織の代表の間の相互理解を通じた合意という意味へシフトさせたことを明らかにする。Ⅴ節では、このシフトをもたらした諸契機について簡単に考察する。