ナカオ ゲン
  中尾 元
   所属   追手門学院大学  経営学部 経営学科
   職種   講師
言語種別 日本語
発行・発表の年月 2019/09
形態種別 国内学会誌(First author)
査読 査読あり
標題 異文化間能力の前提、資質の類型と実証的課題:これまでの枠組みと今後の展望について
執筆形態 単著
掲載誌名 『異文化間教育』
掲載区分国内
出版社・発行元 異文化間教育学会
巻・号・頁 50,111-123頁
概要 【概要】
グローバル化が進む中、異文化間で効果的に機能するための能力を検討することは喫緊の課題である(例えば、Kawachi & Wamala, 2007)。このような能力は広く「異文化間能力」と呼ばれ(Deardorff, 2009; Leung, Ang, & Tan, 2014)、異文化間能力の性質を検討するために、特性論や態度や世界観の立場、実際に取りうる行動を見る立場など、いくつかの異なるアプローチが用いられてきた。本研究は、(1)異文化間能力のいくつかの前提、(2)能力の分類や類型化の可能性、そして(3)今後の実証的に取り組むべき課題、に関して体系的なレビューを行った。
第一に、異文化間能力の基礎となるいくつかの前提や、能力の概念化、文化の定義、そして文化一般(culture-general)の視点などを論じた。次に、異文化間能力の分類や類型化を行い、特性論や、態度や世界観の立場、実際に取りうる行動としての能力、発達の観点、そして統合的な枠組みなどを概観した。具体的には、能力の「前提」としては、個人内の能力観や文化一般への志向性など六つの前提が異文化間能力の諸研究に共通して見られることが明らかとなった。同時に、いくつかの能力の類型として、特性論や、態度や世界観の立場、実際に取りうる行動としての能力、発達の観点、そして統合的な枠組みなど五つの立場があることを概観した。
最後に、今後の実証研究への示唆を論じた。今後の課題や展望として、研究領域や文脈を考慮する必要性や教育実践との関係性を論じた。また今後の異文化間能力の研究は、「認知的完結欲求」や「包括的な認知傾向」などの認知傾向に関する研究を一つの方向性として検討できると論じた。また、異文化間能力は、「判断保留」との理論的関連だけに留まらず、神経科学や言語学で測定されてきた行動抑制傾向(behavioral inhibition)や反応抑制傾向(response inhibition)との研究が可能であると論じた。これらの知見を統合しながら、異文化間トレーニングへの示唆も論じられた。