ヤマモト ケンジ   Kenji Yamamoto
  山本 顯治
   所属   追手門学院大学  法学部 法律学科
   職種   教授
言語種別 日本語
発行・発表の年月 2008/06
形態種別 論文
標題 市場メカニズムと損害賠償――市場連動型不法行為における損害概念への一試論
執筆形態 単著
掲載誌名 神戸法学雑誌
掲載区分国内
出版社・発行元 神戸大学法学部
巻・号・頁 58(1),77-169頁
著者・共著者 山本 顯治
概要 本稿は取引的不法行為・市場連動型不法行為という不法行為の新たな類型を対象として、その本質を理解するためには市場において遂行される不法行為という視点を取り入れることが不可欠であることを論じた。この不法行為類型は市場メカニズムを通じて消費者の意思決定に働きかけ実質的購買力の低下を引き起こすことで純粋経済損害を被らせるという特色を持つ。しかし、市場連動型不法行為により歪められる消費者の意思決定の現れ方は多様であり、これに対応して消費者が被った損害の算定も一見すると様々な現れ方をする。従来の不法行為理論は市場連動型不法行為により惹起される純粋経済損害の全体像・本質を把握することに失敗していた。これに対して本稿は、外面に現れる消費者の多様な選択行動を促し、その基礎に共通して存在するものへの理解が不可欠であると考え、それが「代替効果と所得効果を内実とする選択の自由の侵害」であることを明らかにした。そして、選択の自由侵害の主要部分をなす所得効果を金銭的に評価するための手がかりとなるものが実質所得の減少による効用水準の低下であり、これを金銭に評価したものとしての「補償変分」であることを論証した。その上で、補償変分は「当該財の価格変化の前後における消費者余剰の差」として近似的に表すことができ、これを損害賠償として課すことができることを論じた。本稿で明らかにした消費者余剰の差によって近似的に表される補償変分を損害額とする考え方は、価格変化により需要量が変化する一般的な財について、余計な支出のみならず購入の断念という局面も含んだ包括的な損害概念を提供でき、加えて、価格変化の前後において消費量変化が僅少という財に関しても合理的・整合的な説明を与える。しかも、財の性質や需要量の変化等、損害額算定にあたり考慮されるべき重要な諸点を具体的・理論的に提示することも可能となる。このように、本稿においては、物損・人損を前提として展開されてきたこれまでの伝統的不法行為理論ではもはや対応できない消費者問題が市場連動型不法行為に存していることを明らかにし、取引的不法行為・経済的不法行為法に対応しうる不法行為法理論の構築を試みた。
DOI 10.24546/81005070
ISSN 0452-2400
NAID 110006853393
PermalinkURL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81005070