タカミネ ショウタ   Shota Takamine
  髙嶺 翔太
   所属   追手門学院大学  地域創造学部 地域創造学科
   追手門学院大学  大学院 現代社会文化研究科 現代社会学専攻
   職種   准教授
研究期間 2019/04/01~2022/03/31
研究課題 個々人の健康増進と地域課題解決の相乗効果を生み出す「地域的処方」の理論化
実施形態 科学研究費補助金
研究委託元等の名称 日本学術振興会
研究種目名 若手研究
研究機関 早稲田大学
研究者・共同研究者 高嶺 翔太
概要 空き家・空き地発生、中心市街地衰退等様々な地域課題が発生している実態に対し、医療・福祉関連団体が「まちの居場所」の運営等を通して地域資源を活用し、住民の「個々人の健康増進」とまちの「地域課題の解決」に寄与し、それらの相乗効果を生み出す事を「地域的処方」と呼び着目する。この「地域的処方」の特徴は、近年高まりを見せる健康意識を背景に、それまで地域課題に関心を持たなかった人々、特にシニア世代の地域社会への参画を促すことが挙げられる。研究の目的は①:「地域的処方」の枠組み設定、②:「地域的処方」進展プロセスの可視化、③:「地域的処方」促進要因の解明、④:「地域的処方」促進に向けた研究成果の実践的検証。本研究が着目している「地域的処方」概念を先導する活動として「まちなかの居場所づくり」に着目した。そして社会的・学術的関心の変遷や、既往研究の網羅的整理を進めた。具体的には、(1)「まちなかの居場所づくり」および「居場所」という用語について定義した。(2)運営者・利用者・近隣・地域・公的事業によって構成される「まちなかの居場所づくり」の構造を整理した。(3)これまでの社会的関心を「課題を抱えた社会における「居場所」の発見」「制度から離れた領域での「まちなかの居場所づくり」」「制度・施設を前提とした「居場所づくり」」の3フェーズに整理することが出来、さらに今後求められるフェーズは「制度を活用するまちなかの居場所づくり」であることを整理した。このような枠組み整理を踏まえ、具体的には次のような調査・分析を進めた。(1)「まちなかの居場所づくり」の事例に対するヒアリング調査を実施し、公的事業を活用する「まちなかの居場所づくり」の社会的重要性として、世代交代の側面から説明できることを明らかにした。(2)「まちなかの居場所づくり」の運営者にとって、公的事業には好悪両面の影響があることを明らかにした。(3)運営者は悪影響に対し、運用/施設・整備、積極的/消極的といった違いのある幅広い方法で対応していることを明らかにした。またポートランド、シアトルにおける先進事例に関する視察調査を実施し、高齢者や社会的弱者に対する包摂策として、コミュニティガーデン、居場所づくりなどの活動が実施されていることを確認した。またその際に重要な手法として、地域の多主体に配慮したデザインコーディネートが積極的に行われており、我が国の「まちなかの居場所づくり」に共通点があること、一方で民間の寄付文化が我が国と異なり、その点を補う仕組みが求められることを把握した。「地域的処方」という概念を具体化するにあたり、「まちなかの居場所づくり」に着目して研究枠組みを整理することが出来た。またこの枠組に基づき、全国の「まちなかの居場所づくり」先進事例に対するヒアリング、測量調査を進めることが出来た。2020年度の序盤に学会誌への投稿を目指し、研究成果を取りまとめている。また当初予定していた英国の先進事例に対する調査については、BREXITによる社会的混乱の影響を受け、今年度の実施は見送った。代替として、米国における先進事例を調査することが出来たため研究活動を停滞させることにはならなかったが、2020年度以降の実施が望まれる。基本的には、2019年度の成果に基づき「公的事業を活用する「まちなかの居場所づくり」」について、その進展プロセス、促進要因の解明が大きなテーマだと言える。具体的な調査内容としてはまず、2019年度明らかにした運営主体が捉える公的事業の影響と、その悪影響を緩和するための対策方法について、利用者、地域住民の視点からも検証するとともに、観察など客観的な調査方法からも検証する。また、「まちなかの居場所づくり」の活動の進展プロセスについて、とくに開設の際に活用された人脈や活動拠点の拡大状況に着目し、分析をすすめる。そして、運営者の世代などの基本属性が、開設プロセスや公的事業の活用方法にどのような影響を与えているかという点を明らかにすることを通じて、今後の社会に求められる「まちなかの居場所づくり」像を描くことを試みる。英国の「社会的処方」については、現地視察を含む調査を進め、日本への適用可能性を検証する。とくに、「まちなかの居場所づくり」が、公的事業の悪影響を緩和するために実施していた、運営上/空間活用上の工夫について英国の先進事例においてどのような違いが見られるか、個々の「社会的処方」の活動が政策的位置づけをあたえられることによりどのような制限を与えられているかと言った点の検証をおこなう。一方、新型コロナウイルスの発生を受け、研究推進方策の変更を見据えておく必要があると考えている。観察、ヒアリングなどの手法を想定していた調査については、文献調査や電話、オンライン会議ツールを用いたヒアリング調査に切り替える必要が生じる可能性がある
PermalinkURL https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15178